『手塚治虫ロマンス傑作集(3)』

 サブタイが「恐愛」という女性向け劇画誌みたいなノリですが、今回のラインナップは
 ブラックジャックから「えらばれたマスク」
 黒男の母親を捨てて逃げた父との何十年振りかの再会。再婚相手の中国人女性(この人は別に悪い人ではないらしい)の顔の整形手術を依頼された黒男の葛藤とささやかな?復讐。
 ただこの作品、本質的ではないかもしれないけど、「5年前に罹患したハンセン氏病で顔面が崩れるほど変形してしまい、不妊症にもなってしまう」という描写は今日びちと不味いような気もするわね。
 ロボトミーのエピソードでは確か訂正・謝罪記事が出たように記憶してますが、この回は大丈夫だったんだろうか?
 ばるぼらから「デパートの女」
 え〜と、このころは手塚センセイ、あすなひろしとかをライバル視してたんですかね?
 『暗い窓の女』
 手塚センセイお得意の兄妹近親相姦モノ。
 「鳥はいいな/世間もしきたりもなんにもないんだもんな/あの大空でたったふたりで自由なことができるものな……」とゆーセリフがあるように、手塚作品では鳥というのは「自由」とゆーイメージとともに「近親姦」とか「カニバリズム」といったタブーとも結びついてる気がするんだけど。
 生命の象徴たる『火の鳥』を描いたことと考え合わせると興味深いです。
 文化人類学的には鳥は「死」のモチーフなんだっけ?
 『猫の血』
 猫女の悲恋モノちゅうか。わりと唐突な展開だけど、愛する夫のために一生懸命人間のふりをしようとするネコ奥様がみょーにエロい。
 『サスピション ハエたたき』。
 いや…これってロマンスものか?
 『負け女郎』
 「雪女」の換骨奪胎モノで究極のサゲマン、「負けの女神」に見こまれた男の悲喜劇なんだけど、これもロマンスなのかなあ…
 で、ここまで全ページの3分の1程度。
 残りはナニかといえば、全部『アポロの歌』なんだなこれが。
 なんちゅーバランスの悪さ。
 まあ『アポロの歌』はわりと好きなんでいいけどね。
 合成人の女王シグマがエロ可愛くていいのですだよ?

手塚治虫ロマンス傑作集 3 恐愛 (SHUEISYA HOME REMIX)

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