映画『笑う警官』を観てきました(ネタバレあり)。

 角川春樹監督らしい「スタイリッシュ(っぽい)絵さえ撮れれば、脚本の整合性とかディテールとか小さい事は気にしないっ」という男気溢れる作品。
 …変わってないなあ。
 ミステリとして考えると、(原作はどうだか知りませんが)真犯人ちゅうか黒幕の計画があまりにも杜撰というか、権力を握るための乾坤一擲の殺人計画の肝要部分に「関係のない第三者」を関与させるってどうなのよ?ちゅう気はしますわね。
 いやまあその辺はフィクションとしての製作側の裁量だとしましょう。
 ただその黒幕、劇中では「悪魔」とまで称され、実際クライマックス直前までは主人公側の「正義」とか「無実の仲間を救いたい」という想いまでも利用して、すべての登場人物を己の掌で踊らせていたはずなのに、最後の最後、一番肝心なところで主人公側の仕掛けたあまりに単純なトリックに引っ掛かって身を滅ぼしちゃうのは納得できないところでありますよ。
 他にも鳴り物入りで登場したSWAT(のような警察特殊部隊)がまったく物語に関わってこないとか、クライマックス直前に実は内通者であることが観客に明かされるキャラがまるで落とし前をつけずに終わっちゃうとか、いろいろ腑に落ちない部分が多すぎます。
 腑に落ちないといえば、警察内部の不正を告発する証人となるキャラが、実は最初から黒幕の手中にあっていつでも始末できたはずなのに、なんであんな回りくどい計画立てなくちゃいけなかったんでしょ?
 これってたぶん黒幕が「立身出世のために邪魔な幹部を陥れる」ことと「証言に立つ警官に無実の罪を着せて抹殺する」ことと「警察内部の不満分子をあぶりだす」ことという、複数の目的を同時進行させようとするから焦点がぼけちゃうんじゃないかと思うんですが…
 欲張らずにどれか一点に絞ればよかったのにね。
 というわけで黒幕の目的と同様、映画の出来自体どこかピンボケのシャシンになってしまったような気がします。